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群臣達は夏侯献が皇帝の怒りを買ったのではないかと内心で不安に思ったが、曹叡はむしろ自信に満ちた表情で言った。
「洛都から四千里の彼方に遠征するのだ。たとえ奇策を用いるにしても、正面から戦うにしても、結局は軍事力に頼らざるを得ないのだ。ここで出し渋りをしては反って災いを招く事になるだろう。戦費を出し渋り、我が国の威信に傷がつくような事となってはならぬ」
続いて屯騎校尉の曹肇〈ソウチョウ〉が進み出た。
彼は今は亡き曹休の子であり、父の後を継いで曹叡の側に仕えるようになっていたのである。
「陛下、いかに太尉(司馬懿)が優れた将軍といっても、やはり補佐する副将が必要です。重要な作戦ですから、良将をお選び下さい」
曹叡は頷いた。
「よし。幽州刺史のカン丘倹を司馬懿の副将とせよ。この間の鬱憤を晴らさせてやらねば、彼の気が済まなかろう。皆、異論はあるまいな」
群臣達は皆一礼して、皇帝の言の正しさにただ感嘆するばかりであった。
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