第二十二章~遼東征伐~

5/9
前へ
/223ページ
次へ
…一旦退出した司馬懿が、皇帝の私室に呼び戻された。 「お呼びですか」 司馬懿は一礼して言った。 曹叡は振り向いて頷いた。 「うむ」 司馬懿は曹叡の額が汗ばんでいるのに気付き、不審に思った。 よく見れば、顔色も青いようにも思える。 「陛下、恐れながら体調がまだ回復されていないのでは…」 曹叡は苦笑いをした。 「まだ完全にはな…。君を呼んだのは、朕から言っておく事があるからだ」 司馬懿は頷いた。 「何でしょうか」 「今度の戦いは公孫淵の事はともかく、遠方で遼水や天候にも問題が起きるやもしれぬ。しかし、必ず今度で決めてくれ。次は無い構えで遠征に臨んで欲しい」 「もとよりその覚悟です。ご安心下さい」 何か訳でもあるのですか…と言いかけて、司馬懿は口をつぐんだ。 (もしや病がよくないのか…?) 曹叡は頷いた。 「分かった、頼んだぞ。君でだめなら遼東は征伐出来まい。期待してる」 司馬懿は結局何も聞けないまま一礼して退出した。 一人になると、曹叡は疲れ切ったように腰をおろした。 (一年か…。仲達よ、頼んだぞ) 曹叡は虚ろな視線をして、しばらく動けなかったのだった…
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

967人が本棚に入れています
本棚に追加