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…一旦退出した司馬懿が、皇帝の私室に呼び戻された。
「お呼びですか」
司馬懿は一礼して言った。
曹叡は振り向いて頷いた。
「うむ」
司馬懿は曹叡の額が汗ばんでいるのに気付き、不審に思った。
よく見れば、顔色も青いようにも思える。
「陛下、恐れながら体調がまだ回復されていないのでは…」
曹叡は苦笑いをした。
「まだ完全にはな…。君を呼んだのは、朕から言っておく事があるからだ」
司馬懿は頷いた。
「何でしょうか」
「今度の戦いは公孫淵の事はともかく、遠方で遼水や天候にも問題が起きるやもしれぬ。しかし、必ず今度で決めてくれ。次は無い構えで遠征に臨んで欲しい」
「もとよりその覚悟です。ご安心下さい」
何か訳でもあるのですか…と言いかけて、司馬懿は口をつぐんだ。
(もしや病がよくないのか…?)
曹叡は頷いた。
「分かった、頼んだぞ。君でだめなら遼東は征伐出来まい。期待してる」
司馬懿は結局何も聞けないまま一礼して退出した。
一人になると、曹叡は疲れ切ったように腰をおろした。
(一年か…。仲達よ、頼んだぞ)
曹叡は虚ろな視線をして、しばらく動けなかったのだった…
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