第二章~母の死~

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…黄初元年(221年)、魏王の曹丕は漢の皇帝・献帝から、形式的にはその地位を禅譲され、魏の皇帝となった。 これが、文帝(魏の高祖)である。 それに伴い、曹叡も爵位が斉公に上げられた。 曹丕は皇帝となると、郭夫人などを寵愛し始め、さらに山陽公(退位した献帝)の二人の娘も後宮に入ったため、甄夫人は正妻であったにも関わらず、皇后に取り立てられなかった。 甄夫人は嘆いた。 前年はギョウを訪れ、昔の事が心に甦っていたのである。 さらに言えば、彼女が望んでこの曹家に嫁いだ訳では無い。 これでは、今まで堪えながら生きてきた自分に対して、あまりの仕打ちではないか… 男女の情とはなかなか複雑であり、本人達通しで無いと分からない心情がある。 こればかりは誰が悪い訳では無く、当事者の問題なのである。
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