第三章~皇太子~

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…曹丕は、甄夫人の事があったために、曹叡を後継者として太子にたてようとしなかった。 彼は、甄夫人を死に追いやった事を心のどこかで悔やんで、曹叡を気にかけるようにしていたが、曹叡は口数が少なく、両者の意志はなかなか疎通する事が無かった。 そうした理由から内心では徐夫人〈ジョフジン〉の子である、京兆王の曹礼〈ソンレイ〉を後継者にしようと思い始めたのだった。 そんな時である。 たまたま、曹叡が曹丕の狩猟の供をした時があった。 二人の前に子連れの鹿が現れた。 ここぞ、と思った曹丕は矢をつがえて、鹿を仕留めた。 そして、さらに言った。 「平原王よ、子鹿の方はそなたに譲ろう。射て獲物を仕留めよ」 しかし、曹叡は射ようとしなかった。 曹丕はその態度を不審に思って言った。 「どうした、何か射れない訳でもあるのか」
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