第一章~曹丕と甄氏~

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…名高い官渡の戦いで曹操〈ソウソウ〉が袁紹〈エンショウ〉を破ってから、河北の情勢は一変した。 やがて袁紹が亡くなると、その長男の袁譚〈エンタン〉は弟の袁熙〈エンキ〉・袁尚〈エンショウ〉と仲違いをし、やがて争いを始めた。 曹操は謀臣・郭嘉〈カクカ〉の計に従い、両者が疲弊した頃をみて攻め込んだ。 建安〈ケンアン〉十年(204年)八月、冀州〈キシュウ〉を平定すべく、その攻勢は中心である都市・ギョウに達したのであった… …その時、袁熙の妻である甄氏<シンシ>は姑である袁紹の妻・劉氏の世話をするために、北に任地があった夫と別々に暮らしていた。 この時、彼女はお腹に袁熙の子を宿していた。 (早く戦いが終わると良いのだけれど…) 夫と義兄の袁譚の争いは、彼女にとって悲しむべき事だった。 甄氏は幼い頃から勉学をして、兄達から「女博士になるつもりか」とからかわれた。 甄氏はそれを聞くと言った。 「昔、優れた女性は歴史から戒めを学んだものと言います。わたしもただ、そうあるべきだと思うのです」 このように、彼女は聡明で、また肉親に対して非常に情愛の深い女性であった。
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