序章

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 そう言って、彼は僕を壁に固定していた器具を取り外した。自由になった僕は、改めて周りを見回した。壁も床も真っ白な素材でできた狭い部屋だった。隅の方に上に続く白い梯子がある他には何もない。窓がないのを見ると、ここは地下室なのかもしれない。  彼は人差し指を立て、部屋の中を歩き回りながら話し始めた。 「説明と言っても簡単な話だ。今世界は邪悪の手に落ちようとしている。そうなれば大変だ。豊かな大地は瞬く間に枯れ果て、日の光を拝むことは二度とできなくなるだろう」  一気にそこまで言った後、彼は立ち止まって僕を指差した。 「君の役目は、そうなる前に邪悪を止めることだ。どうだい、分かりやすいだろう?」  僕は何も言わずにその指を見つめた。彼はいったい何を言っているのだろう? 「まぁ、一言で言えばこれが君の『使命』と言ったところだ。細かいことは追々説明する」
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