序章

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 彼は部屋の隅へ行き、梯子に手をかけた。 「とりあえず食事にしよう。君の状況整理も必要だ。そこにかけていてくれ」  彼が指差した先には、白いテーブルとイスがあった。見た目も触り心地も壁と同じ素材のようだ。しかしさっきまでこんなものがあっただろうか?  彼の言うとおり、状況整理が必要だと思った。何が何だかさっぱり分からない。  僕は彼の手によって造られた。邪悪を倒すために? 馬鹿げている。僕にそんな力などあるはずがない。僕は生まれたばかりで、何も分からない。だが彼は確かにそう言った。それが僕の「使命」なのだと。  そもそも、彼はいったい何者なのだろう。なぜ彼がこんなことをする必要がある? 邪悪とはどのような存在なのだ?  考えていても仕方がないと思った。結局、僕は何も知らない。材料がないのだ。考えることすらできない。
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