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「まだ名乗っていなかったか」
対してネロは、己を知らせるかのように、尊大に自身の名を掲げる。
ネ ロ
「"殺戮者"───。私が自らつけた名だ」
自身の在り様を如実に表すその名を、一切の恥もためらいもなく、誇りを持って口にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カツカツ、という二つの足音が廊下に響いている。
俺とイヴのものだ。
俺達は今、イヴの師匠にして今回の事件の処理を指揮する魔術師の部屋へ、話を聞きに行こうとしている。
普通なら少しは気負いをしたりはするものだが、俺はそれどころではなかった。
「痛ぇ……まだヒリヒリする」
痛みに顔をしかめ、手を頬に添える。
俺の頬には、レイアさんに見られたら爆笑されそうな真っ赤なビンタの跡があった。
女の子の本気ビンタを喰らったのは人生初だった。(グーはある)
「うるさいっ! あ、あ、あれはあんたが悪いんだから!」
前をズンズン歩くイヴがつっけんどんに俺の小言をはねのけた。
後ろから見ても耳がまだ真っ赤だった。
「信じらんない信じらんない信じらんない……」
何もそこまで怒らなくてもいいだろうとウンザリした。
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