第一章・始まり

6/50
前へ
/162ページ
次へ
自然に視線はそのまま自分の手元に移る。   黒い動物の手だった。   『寝ぼけているんだろうか…』 恐る恐るベッドから降りると、視界が異様に低く感じる。 いや、視界が低いのだ。 鼓動が早くなる。口から今にも心臓が飛び出るのではないか。 逸る鼓動を抑え、視線を走らせると見覚えのない鏡台が見える。 ふと部屋を見回すと、自分の部屋ではないようだ。   『一体何が起きたんだ?』疑問が沸き上がる。 黒い手足。低い視界。 自分の姿を確認したかった。 その瞬間、目が覚めるだろうという淡い期待は粉々に砕けた。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

96人が本棚に入れています
本棚に追加