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「いやいや。これは失礼失礼。『干からびた河童』等と不愉快な事を思われましてね。ついつい悪戯をしたくなったんですよ」
そう猫に話し掛ける。
この店主はもしかして……。
「やっと解りましたか? 干からびた河童では無いんですよ。サトリですよ、サトリ。サトリの悟浄と申します」
民話でしか知らない妖怪だ。
「妖怪? 妖怪? その妖怪に何の用です?」
彼の視線は、私の手元のチラシにあるようだ。
私はもう一度、チラシの内容に目を通す。
『人外の訪問、怪異にお困りの方。
その他、理解し難い現象にお悩みの方。
ご相談承ります。』
と、突然、風も無いのにそのチラシがはためいたかと思うと、裏面が表を向く。
私の記憶の中では、そこには何も書かれていない筈だった。しかし今、そこにはこのような文面が浮かび上がっている。
『人間の侵入、迫害にお困りの方。
その他、彼らの理解し難い行動にお悩みの方。
ご相談承ります。』
私が、はっとして顔を上げると、店主がにたにた笑っている。それは、悪意が篭っているような笑いだった。
そして、口を開く。
「それで? 新居に蛙の化け物が出る?」
サトリの悟浄は私の心を読んで、そう言った。
しかし、まだ続きがありそうな、そんな含みを持たせている。
「そうです、そうです。人間の割には察しが宜しい」
にたにた、にたにた。
にたにた、にたにた。
「侵入者、侵入者。侵入者はそちらの方ですよ」
彼がそう言うと、突然世界が暗転する。
私は暗闇の中に取り残された。
途方に暮れる私の耳に、
「ぐぇこっ」
蛙の鳴き声が、一声聞こえたのだった……。
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