第1話「始まり」

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すると、気持ちのいい日差しが照りつけてきた。 やはり今日は晴れのようだ。 空を見上げるとそこには雲1つ無い青空が広がっている。 ただ、思っていたよりも太陽の位置が高いことからそれなりに時間は経っているようだ。 いつもと全く代わり映えしない村の中を歩くと、すぐに酒場の前に着いた。 中からは酔っ払いの叫び声やら歌声が響いている。 だが今日用があるのは酒場ではない。 いつも酒場の前で佇んでいる村長に用があるのだ。 「村長、こんにちは」 「おや、カズ。何か用かのう」 またこれだ。 村長は最近すぐに物事を忘れてしまう。 そのせいか話が長引くことが多い。 昔は凄腕のハンターだったらしいがその面影は今じゃどこにも見えない。 「だから、依頼のことですよ。馬車はもう来てますか?」 カズは簡潔に、大きな声で村長に言う。 こうでもしないといつまで話が続くかわからない。 すると村長は思い出したように 「おお、そういえば馬車が3時間ほど前に来ておったのう」 と言った。 (3時間前?ってことは) 「やばい!かなり待たせてる!!それじゃ、村長。行ってきます」 カズは慌てて走り出す。 向かうのは村の入り口、大きな2本の樹がゲートの代わりをしている場所だ。 入り口へ近づいていくと馬車が1台止まっているのが見えた。 「怒ってるかも」 まさか3時間も前に来ているなんて思わなかった。 カズがスピードを緩めずに馬車に近づいていくと、御者が顔を出した。 見た感じ20歳にもなっていないような短髪の男だ。 「やっと来たか。来ないのかと思ったよ」 「すみません」 御者に向かってカズは頭を下げる。 いくら向こうが仕事とはいえ3時間も待たせたのだ。 「気にするな。こっちは仕事なんだから」 そう言って御者は馬車へと向き直り、カズに馬車に乗るよう催促する。 カズが馬車に乗るとすぐに馬車は動き出した。
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