招待状

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僕の脳は思考を止めた。 目の前が黒くなり、世界がモノトーンに侵されていく。 行けば、マリアには一生会えない。 行かなければ…死。 どうにかする手立ては無いか。 命乞いでもするか? いや、無駄だ。 この国の女王陛下は残酷で名高い。 金と権力に物を言わせ、今までも好きな様に人を殺してきた。 しかも相当なサディストらしく、二つ隣の街に使いを寄越しては死にかけた人間を攫い、いたぶっていると聞く。 噂では、急死した夫でもあるジェームズ・オールヴァンズ王も、女王が暗殺したのではないかと囁かれている。 まず、命乞いには応じないだろう。 臣従であっても、逆らった者には死の制裁を。 そういう人だ。 城に幽閉されるとなると、一生城で過ごす事になる。 僕はマリアに逢う事も許されず…死ぬ。 しかも悪魔のような女王陛下だけを描き続けなければならない。 地獄だ。
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