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「痛い!あなた下手ね」
赤が目立つ女王のお召し物の中でも、一際目を引く真紅のイブニングドレスに着替えるため、コルセットを締め直す女中に悪態をつく。
「申し訳ございません」
「うるさいわね、少し黙りなさい!」
陛下の苛立ちは、ある一人の人物に向けられていた。
「どうしてなの!!?」
陛下が臣従を睨み付けながらながら喚く。
「私の絵描きは何故来ない!?この私が城に呼んでやっているのに!」
白髪混じりの臣従は、困惑したように目を伏せた。
「手紙はお送りました…しかし」
「来ないのなら連れてくれば良いだろう。どうして私が待たなければならないのよ」
女王は、中々現れない百人目の【お目付け人】に憤慨しているようだ。
女中の手は恐怖で震えていた。
「痛い!使えない召し使いなんて要らないんだよ!!死にたいの!?」
女は身体を強張らせて呟く。
「申し訳ございません…どうか…殺さないで……」
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