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「レイ、お誕生日なの?じゃあ、お祝いのケーキを持って行かなくちゃ」
嬉しそうに顔の前で手を合わせ、満面の笑みを見せる。
時々教会に足を運んでいるマリアと、司祭の娘は、年こそ五歳ほど離れてはいるが友人関係にあるようだった。
「うん。そうしようか…でも、材料が……」
「大丈夫!私、節約の腕には自信があるから」
麻のブラウスの袖を捲り上げ、得意げに微笑む。
「料理の腕って言わせられないのが悲しい所だな~」
上半身を起こした状態で、僕もマリアに笑顔を返した。
彼女は料理が大好きで、事あるごとに誰かの為に作っていた。
食糧難の今は、小さなカップケーキを作るだけになってしまったが…
「両方よ。今からわくわくしちゃう!バース顔を洗ってきて、朝食にしましょう」
軽やかにキッチンへ戻って行くマリアの後ろ姿を見て、僕は胸が締め付けられた。
好きだ。大好きだ。
一瞬も離れたくないくらい。
それが例え、どんな困難な道であっても。
その笑顔が見えない所でなんか、きっと僕は生きていけない。
まるで兎のように、寂しくて死んでしまうだろう。
それくらい、愛してるんだ。
絶対に、絶対に。
僕はマリアと離れない。
熱い視線を感じたのか、さっきまで後姿だったマリアが振り向いてキョトンとしている。
独占欲が強すぎるかな…
自嘲しながらも、こんな可愛い姿を他の誰にも見せたく無いと思う。
僕だけのマリア。
愛しい、マリア。
でも気をつけよう。
僕の愛で押し潰してしまわないように。
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