1263人が本棚に入れています
本棚に追加
一方、厨房に戻っていたリクは料理の準備をせず、野菜などを切る台であろうところに皿をおく。
そして親指、中指を重ね、
親指を滑らし音を鳴らす。
すると、確かにさっきまでは皿には何もなかった…。
いや、あるはずがない。
だが今では物体がある。
食欲を漂わせる匂い。
寒い時につい、食べたくなるような暖かい湯気。
綺麗に飾られた、物体。
「上出来だ…。」
リクはそう呟くと、物体が乗った皿を手にのせ、女のテーブルへと持っていく。
するとどうだろう。
さっきまで考え事をしていた真剣な顔つきから目を輝かせ、口を開け、匂いを嗅ぎだした。
その光景はまさに、レストランで出来たてのハンバーグを店員が持ってき、それを美味しそうに眺める子供のようだ。
最初のコメントを投稿しよう!