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なんだかんだいって暑いもんは暑い。
今日だって35度だった。昨日も35度だったし、明日は35.5度っていってる。
でもそんなもんどうだっていい。
夏が殺人的な猛暑を引っ提げてくるのは毎年の事だし、なんだかんだいって冬の監獄の中で後悔するんだ。
だから今のうちに浴びれるだけ浴びておく。
人体に有害な熱線でもそんなもんどうでもいい。
傷口に汗が染み込むけど心地よかった。
そんな負け惜しみ思いたくなかったのに…
赤崎 渚は体育館裏でフェンスに凭れ、斜陽を背に受けながら暫く今までの事を整理した。
廊下で三年生に拿捕される。
背中をど突かれながら体育館の裏まで連行。
そして殴打されること15分。
最後には唾まではきつけられた。
原因は分かっている。
渚のクラスメートに青沢 七海がいた。別にどこの女子とも変わらない、至って普通の高校一年生だが、その青沢に告白されたのが昨日の丁度今頃だった。 そして24時間後、青沢の兄に復讐にあった。
青沢の兄は学内でも郡を抜いた不良生徒で停学処分も指折り数えてもきりがない。
何の事だかさっぱりわからないまま殴られ、唖然としている間に口角の傷が痛みだし、青沢の兄だとわかったのは、首筋の脇にある大きなホクロを見てからの事だ。
青沢は存在感の薄いクラスの極めて端に位置していて入学して四ヶ月経っても渚は青沢がクラスメートである事に気付かなかった。
放課後、それも昨日になって初めてその事実に気付いたのははっきり言って偶然だったし、それもこれも渚本人が遅刻魔であった事も一因ではあった。
担任から及第すら危ういと宣告されていた渚は別段反省する気もなく、とにかく早く荷物を取って帰るつもりだった。
青沢と目を合わせるつもりもなかったのに、青沢は渚の視線を捕らえた。どんぴしゃのタイミングで射止められた渚は、引くに引けず、ようとおざなりな声をかけた。
「また叱られに?」
「なんだよそれ。」
「だってもう五回目。」
悪い顔じゃない。ただ首筋の細長い古傷のような後が、端正な顔立ちに影を落としていた。 「お前には関係ないだろ。」
「関係あるんだ。」
青沢の髪は、渚へ向かうごとに揺れて波打つ瞬間、蒼くはためいた。
「だってやめられたら困るよ。」
「理由を先に言えっての。」
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