よそよそしい殺意

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「俺の質問に答えろ。お前、俺の母親は…」 教室の窓硝子が弾け飛んだ。破片が渚達を襲い、翳した腕に鋭利な傷跡を残した。 「なんでいつも前フリなしなんだよ!」 だが白井も傀儡も無傷で涼しい顔をしていた。 「白井!大体なんでお前が絡んでるんだよ!青沢の手先か!」 「言葉に気をつけろ。」 白井はどこに忍ばせていたのか、竹刀を右手で渚に突き付けていた。 「俺はあいつの手先でもないし、この案件には無関係だ。」 「だったら…」 その時、渚には迫りくる黒い影が見えた。湾曲した二刀を胸で交差させ、白井の背を狙っていた。 「うぜえよ。」 一言ついた悪態。そして竹刀が一瞬にして太刀に変化し、影を見ることなくひと突きで貫いた。 「傀儡様。数は。」 傀儡は髭を広げ、何かを感じ取るように静止した。 「二十四…五…六…七…」 「沢山いるんですね。」 「朱零の一件。あやつらもおいそれと見逃せないようだな。」 「なぁ赤崎。」 太刀を渚に渡した白井は窓に向き、素手で構えを取った。 「それでやれ。死ぬなよ。」 「や、やれって…俺剣なんて…」 「振り回せ、以上だ。」 「無理だぞっ。こんな重いの。」 太刀は持ち上げるだけでも呼吸が乱れる。 「無理でもやれ。死にたくなきゃな。」 話している間にも、影は迫ってくる。 しかし渚の体は震えで思う通りに動かない。 「とろい。」 渚を影が襲うが、白井の素手は尽く弾き返す。 「お前、本当に朱零か?業火すら吹き払う鬼神の烈火も見えないぞ。」 「悪いな。情報収集が不十分でな。」 「御託はいい。早く片付けろ。」 白井は手刀で一陣の最後の一人を打ち倒した。 「一人でやるにはきつい。」 仕方ないと渚は太刀を両手でしっかり握り構えた。 「なんか助言は?」 白井は呆れ顔で振り返り、 「今更言ってもへっぴり腰はなおらねぇよ。」 「しょうのないやつだ。」 と傀儡が渚の肩に現れる。 「傀儡っ。てめぇも闘えよ。」 「馬鹿者。鼠に何が出来る。」 影が窓に手をかけた。身を乗り出し、低い姿勢を取った。 「来るぞ。」 傀儡の声が届かない内に影の剣が太刀に激突する。弾かれた渚は机もろとも飛ばされた。 「ってぇー!」 「ぼさっとするな!」 頭上に影。太刀を咄嗟に掲げる。 峯に添えた左手に食い込まれた傷みが走り、耐え兼ねた渚は反射的に影を吹き飛ばした。 「のやろ!いてぇんだよ!」 影は悲鳴もなくのそりと立つ。 「防御は考えるな。」
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