空の器

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空の器

今私がいる場所。 誰に聞いても答えられない場所。 誰が探しても見つからない場所。 そして私が私であるための場所。 時の闇に閉ざされて悶える内に、私はここへ流された。 そして目覚めるより早く、崩れ落ちるよりはかなく、悟るより素直に、私は私を知った。 届いて欲しい叫びは水泡となって散り、叶えたい夢は月明かりよりも弱く朧げ。 鉄塔の中腹で私は街を見下ろす。 どこよりも、何よりも、誰よりも失意を見渡せるこの場所で。
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