いつだって思い出すのは

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去年の桜が満開だった頃、俺は偶然この場所を通りかかった。 その時彼女を見かけた。 その光景は一瞬、時が止まったかと思うほど美しい一枚の絵のようだった。 その時、彼女は帰宅するためまた歩きだしたのだが、すぐに転んでしまった。 俺はすぐに近づいていき、手を差し伸べた。 「大丈夫ですか??」 声をかけると彼女は顔を真っ赤にした。 「すいません。大丈夫です…」 彼女を立たせてから荷物を拾い、手渡した。 なんとなく気まずかった俺は話し掛けてみた。 「桜好きなの??」 「えっ??あ、はい…。母が好きな花で私の名前もさくらっていうんです。」 「へぇ、さくらちゃんか…いい名前だな。」 「…ありがとうございます。あの、あなたのお名前は??」 「あぁ、俺は彼方。落合彼方。よろしくね。」 その後一緒に帰りながら話してわかったことは同い年で隣のクラス。 お母さんは数年前に病気で亡くなっていて、お父さんと2人暮らし。 そのため、家事はさくらがやっているらしい。 意外にも家は近所だったので家まで送ることにした。 「あ、私の家ここです。送ってくれてありがとう。今度ご飯でも食べにきてね。」 話していたからなのか遠回りなはずなのにすぐついてしまった。 「あぁ、わかった。じゃ、また明日な。」 さくらはにっこり微笑んで手を振ってくれた。 ――か、可愛い…。 これが俺たちの出会いだった。
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