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すると文次郎はふい、と顔を背けてしまう。 (そう言えば) 普段から仙蔵の髪を梳くのは文次郎の役目だった。 何時からだったか明白には覚えていないが、たしか実践演習の後の風呂上りに文次郎に「髪を梳いてくれ」と頼んだのだのが始まり。 その時はただ単に自分が何をするにも面倒だったのが理由で、文次郎はしぶしぶ言いながら髪を梳いてくれた。 驚いた事に髪を梳いている文次郎のゴツゴツした手が思ったより優しくて、仙蔵はその手を気に入り、以来ずっと文次郎が忍術学園に居る時は彼に髪を梳くのを任せている。 それなのに今日は、髪結いが本職であったタカ丸に髪を梳いて貰った事もあり、特に文次郎の手を煩わせる必要もなかろうと思って何も言わなかった。 「...何も髪如きで」 「うるせぇな!」 「お前とて日頃から面倒だと言っていただろう」 「あぁもう、解った!どうせ俺が悪いんだよ!」 (あぁ) なんて、愛らしい。
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