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こうなると、長次は全てを悟る。
【一を聞いて十を知る】
なんて言葉ではないが、彼とはそれなりに(ぶっちゃけ肉体関係もある)付き合いが長い。
どうした、なんて野暮な質問はせず、廊下にある気配に静かに意識を傾けた。
「…虐めるのも、大概にしたらどうだ」
元々無口な長次は呟くようにぼそぼそと気配に言った。
すると廊下からひょっこり級友達が顔を覗かせた。
「別に、虐めてはおらんが」
苦笑しながら、文次郎と同室の立花仙蔵が言う。
「遊んでやろうと思っただけだよ」
「嘘吐けッ!遊んでやると吐かしやがって手元の蝋燭と縄をどうするつもりだったんだテメェはッ!!」
「折角だから、実践的に使える遊びにしてやろうかと」
淡々と仙蔵が言うものだから、文次郎は二の句が告げなくなった。
代わりにぎゅっ、と長次の寝巻を握る。
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