189人が本棚に入れています
本棚に追加
目尻に唇を寄せ、雫を吸い上げる。
幼子をあやすみたいに体を抱き上げ、背中を擦ると、文次郎の手入れされていない髪の毛が私の頬を掠めた。
「...私の髪がそんなに好きか?」
もう一度同じ質問を繰り返す。
今度は文次郎も、無言ではあったが素直に頷いた。
「そうか」
結わってあった髪を下ろし、そのまま文次郎を押し倒す。
「情事が終わったら、梳いてくれ。どうせまた乱れるだろうから」
彼は再び無言で頷く。
私の流れる髪を一房手に取って、文次郎は私の髪に唇を落としたのだった。
END
最初のコメントを投稿しよう!