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「...何しに、来たんですか」
声が、震える。
「何って、滝夜叉丸に会いに来たに決まってるだろ?」
「この体力馬鹿の自主練に付いて行ける2年がいるって話を聞いたんでな。どんな奴か見に来た」
「会いに来て、馬鹿にしに来たんですか!?」
「...滝夜叉丸?」
七松先輩はきょとん、と目を丸くした。
「女みたいだと馬鹿にしに来たんですか!?」
「馬鹿になんてしてないよ?ただ、滝夜叉丸が可愛かったから、」
「止めて下さい!私にとっては侮辱の言葉です!!」
何故だろう。
今まで七松先輩以外にも「可愛い」とか「女みたい」と言われた事は多々あったのに、こうも酷く腹が立ったのは初めてだった。
廊下で容赦なく大声で叫ぶものだから、他の2年生が興味津々で聞き耳を立てているのが解る。
ただでさえ4年生(しかも、七松先輩はいい意味も悪い意味も含めて有名な人だ)が3人居るという珍しい光景な上、私自身もそれなりに2年生の間では噂が色々立っていたものだから、興味は2倍に膨れ上がったのだろう。
「失礼しますっ!!」
この雰囲気に耐えられず私はずかずかと歩き出した。
七松先輩は何も言わず私を見送った。
この日からぱったりと七松先輩は私に関わらなくなった。
あれ程頻繁にあった自主練の誘いも、もう、無い。
「滝夜叉丸」と呼ばれるのは委員会での作業の時だけ。
それが、少し寂しくもあって。
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