189人が本棚に入れています
本棚に追加
「...あれは、自分でも酷く大人気ない事をしたな、と思ってます。お気に障っていたのなら、申し訳ありませんでした」
この2年間、自分の不甲斐無さで勝手に怒鳴りつけてしまった事を後悔し続けて、謝ろうと思ってはろくに話し掛ける事が出来なかった。
一年は組の能天気さが欲しいと、本気で思った事がある。
勿論今でも、この人が好きだ。
でも、もう止めよう。
この人を好きでい続けたら、私は忍務で殉職するより先に心労で死んでしまうような気がする。
先輩後輩の関係でいた方が、きっと楽だから。
「すみませんでした」
「ごめん、滝夜叉丸」
「悪いのは私ですから、七松先輩が謝る必要なんて無いんです」
「うん、でも」
滝夜叉丸を可愛いと思ったのは本当だし、今でも私は滝夜叉丸を可愛いと思ってる。
真顔でそんな事を言われたら、怒りを通り越して呆れてしまうではないか。
それにね、滝夜叉丸。
先輩は言った。
「私、仙蔵とは何も無いから」
「は?」
「2年前、私と仙蔵が付き合ってるって噂が立っていただろう?あれ、嘘だから」
「う、嘘って」
「もしかして、信じてた?」
「ま、まさか...はは...」
笑顔が引き釣る。
「だって、私が好きなのは今もむかしも、たきやしゃまるだけだもの」
「...え...」
まるで音声のスローモーションみたいに、七松先輩の言葉が私に聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!