房中術

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この実習は何気無い日常の中で行われる。 期間は一週間。 教師の見張りは一切無し、合否の判断は相手が下す。 相手の一言次第で自分がこの試験に合格するか否かの結果が出るのだ。 裏を返せば、どれだけ相手が満足しても「不合格」と言われてしまえばそこで終わりなのである。 本日、雷蔵は都合の良い事に(?)図書委員の貸し出し当番だった。 しかも、当番のもう一人は「あの」中在家長次である。 幸か不幸か、わざわざ自分から行かなくても自然に会える訳で。 (でも、中在家先輩は僕が相手になる事を知ってるはず...) どうしよう。 図書室に向かうべきか、それとも下級生に担当を代わってもらうべきか雷蔵は悩みに悩んだ。 図書室に行けば長次はいつもみたいにカウンターで本を読んでいるだろう。 一体どんな顔をして顔を合わせれば良い...? けれど、ここで下級生に担当を代わってもらったら、今度は自分から会いに行かなければならなくなる。 それはそれで、何だか...。 (は、恥ずかしい...!!!) さぁ、ここでついに雷蔵の迷い癖が現れた。 行くべきか、行かざるべきか、迷いに迷って、結論が出る前に、目の前に同じ図書委員の一年生、きり丸が歩いてきた。 「あー、雷蔵先輩」 「こんにちは」 「こんちわー。先輩、図書当番でしたよね?」 「う、うん」 「さっき中在家先輩に会ったんですけど、今日は図書室は使用禁止にして、虫食いとか駄目になった本を仕分けするからなるべく早く雷蔵先輩には来て欲しいって中在家先輩言ってました」 「え」 「じゃ」 「ちょ、ちょっと、他の図書委員は...」 「上級生二人で十分足りるだろうから委員会集合はしないって」 って事は、図書室に二人っきり決定。 (嫌過ぎるーっ!!!) でも、中在家先輩直々のお呼び出しを自分が断れる訳も無く。 決意を決め、とぼとぼと図書室に向かう雷蔵であった。
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