14人が本棚に入れています
本棚に追加
「うーんどうしたものか……。」
「どうかしたんですか?」
僕は普通に話しかけてしまった。
僕に気づくと、おじさんはパッと顔を明るくして言った。
「おぉ!若者よ!聞いてくれ!ワシは偉大な博士、イトウ……と自分のことはどうでもいい。この綺麗な装置、あとネジ一本で完成なんじゃが……うーんどうしたものか……。」
また顎に手を当てる。
そして思いついたように、僕に質問してきた。
「若者よ。消えたいと思ったことはあるか?」
その目は、厳しかった。
僕は視線を逃がして、考えた。
失敗した時。
喧嘩した時。
いじめられた時。
フラれたとき。
誰かの喧嘩を見た時。
うまくいかない時。
いやなニュースを見たとき。
眠れない夜。
とっても暇な時。
無視されたあの日。
目標を失った時。
………。
自分の存在を疑った時、僕は消えたいと願っている。
「割と、ちょくちょく思ってますね。」
僕はさらっと言ってのけた。
博士は「やっぱり」といった顔をして、ため息をついた。
そして、その綺麗なロッカーに手をかけて言った。
「これは、消えたいと思っている人間が、消えることができる機械なんじゃ。」
「死ぬんじゃなくて……?」
「痛み無く、跡形もなく、消える。」
「心を痛めてる人間は多い。彼らの願いを叶えるために、暇つぶしに作ってみたんじゃ。」
「作ってる途中は機械を作るのが面白くて、夢中になってここまで出来てしまったんじゃが……気づいたんじゃよ。」
最初のコメントを投稿しよう!