消える

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「うーんどうしたものか……。」 「どうかしたんですか?」 僕は普通に話しかけてしまった。 僕に気づくと、おじさんはパッと顔を明るくして言った。 「おぉ!若者よ!聞いてくれ!ワシは偉大な博士、イトウ……と自分のことはどうでもいい。この綺麗な装置、あとネジ一本で完成なんじゃが……うーんどうしたものか……。」 また顎に手を当てる。 そして思いついたように、僕に質問してきた。 「若者よ。消えたいと思ったことはあるか?」 その目は、厳しかった。 僕は視線を逃がして、考えた。 失敗した時。 喧嘩した時。 いじめられた時。 フラれたとき。 誰かの喧嘩を見た時。 うまくいかない時。 いやなニュースを見たとき。 眠れない夜。 とっても暇な時。 無視されたあの日。 目標を失った時。 ………。 自分の存在を疑った時、僕は消えたいと願っている。 「割と、ちょくちょく思ってますね。」 僕はさらっと言ってのけた。 博士は「やっぱり」といった顔をして、ため息をついた。 そして、その綺麗なロッカーに手をかけて言った。 「これは、消えたいと思っている人間が、消えることができる機械なんじゃ。」 「死ぬんじゃなくて……?」 「痛み無く、跡形もなく、消える。」 「心を痛めてる人間は多い。彼らの願いを叶えるために、暇つぶしに作ってみたんじゃ。」 「作ってる途中は機械を作るのが面白くて、夢中になってここまで出来てしまったんじゃが……気づいたんじゃよ。」
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