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何時間、経過しただろう…
身体は、相変わらずほとんど動かない。動くのは、指先くらいである。針が刺さっているせいか、恐いのに涙もでない。トイレにも行きたくならない。時折、風呂場から村上の奇声が聞こえてきた。相当な激痛なのだろう。
ガタガタガタガタ…
地震だ…
結構大きい…振動が身体に伝わってくる。そして、揺れが納まった。
村上「いぎやぁぁあぁあ」
村上の奇声は更に激しさを増していった。地震には気が付いてないようだ。桜は、さっきと同じように、なんとか身体を動かせないか試し始めた…
ピク、ピク、すっ…
たいして力が入らないが、腕がゆっくりと動かせた!
桜(動く!さっきの地震のせい?ほんの些細な振動が、針に伝わったの?…なんとか、針を抜ければ…)
桜は首に手を動かす。
桜(きっと、身体の自由を奪っている針は、最初に痛みを感じた首元に刺さっているはず…これを抜けば…)
ゆっくりとだが、確実に首の後ろへ手を運ぶ。
プッ
小さく、鋭い針を抜いた。身体に痺れのような感覚が残っているが、身体が動く。すぐにでも立ち上がり、この部屋から逃げ出したい。しかし、痺れが残っている身体は、まだ言う事を聞かない。桜は、まず携帯を手に取る。『圏外』電話は使えない…桜は、はいずって部屋のドアへと向かおうとした。
しかし、風呂場からの奇声が、ピタリと止んだ。シャワーの音が数秒聞こえ、すぐに聞こえなくなった。
桜(もうすぐ、アイツが出てくる…このままじゃ、逃げられない。)
桜は、テーブルの上にある大理石風の灰皿を手にとって懐に隠した。
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