先端恐怖症

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 水木探偵事務所の主な仕事は浮気調査とペットの捜索。基本的には、金持ちの依頼以外は引き受けない。  義人は、辰美がシャワーを浴びている間に今受けている依頼内容のチェックを始めようとした。  樹海のような、辰美専用ディスクに埋もれたファイルを探す。義人の手に、何かが当たった。 義人「うわぁー!!」  叫び声をあげる義人。  その声を聞き、バスタオルを巻いたまま、辰美がシャワー室から飛び出した。そこには、床に尻餅をついて青ざめた顔をした義人がいた。辰美は、義人の視線を追った。  ディスクの上…画鋲。 辰美「わりぃ!オマエの先端恐怖症、わかっちゃあいるんだが…カレンダーが去年のまんまだったから、付け替えようとして…」 義人「…いや、ゴメン。叫んだりして…大丈夫。とりあえず、落ち着いてきたから…」  義人は、先の尖った物に極度の恐怖感を覚える『先端恐怖症』である。  見るくらいなら、顔が青くなり貧血で倒れるか倒れないかの中間を彷徨う程度だが、身体に少しでも触れると、腰を抜かして悲鳴をあげる有様である。  もちろん、義人はこの事をとても悩んでいた。両親の話を聞くかぎり、きっかけすらない。生まれた時から、こんな調子だったという。  その後二人は、調査中だった浮気結果を依頼人に適当に報告。報酬を受け取って、夕方には何もする事がなくなった。 トントン  事務所のドアを誰かがノックした。
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