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悪寒と震えと不快さはそこで半端じゃないものになった。
何かいる。絶対なにかいる。
あの障子の向こうの廊下に何かいる…
悲鳴を上げて祖母の布団に逃げ込みたかったけど体は動かないし顔は廊下を向いたままだし目は閉じれない。
…ガリッ……ズリズリズリ…
その時視界に入ってきたものを俺は今も忘れられない。
それは床にへばり付く女の姿だった。
四つんばいじゃない。文字通りへばり付いてる。
ベッタリ床に張りついてた。
あらぬ方向にひんまがった手で床を掴んで進んでくる。
…ガリ……ズズズ…
爪が床を引っ掻く音と体が引き摺られる音。
今思い出しても鳥肌が立つ。
その女は障子と障子の真ん中まで来ると俯せてた顔を俺に向けてきた。
長い髪の毛がかぶさった白を通り越して灰色掛かった肌。
目のない眼窩。
半開きの口。
俺から腕一本分の距離でその顔はニヤ~って笑うんだよ。
俺は自分に夢だ夢だ悪い夢だと何度も言い聞かせたけど目の前の女は消えてくれない。
また笑った。
その瞬間
ガリズリギリズルバリズズズガリズルリ……
女は物凄いスピードになって俺の前をただ通り過ぎていった。
カクカクした気持ち悪い動きだった。
そのあとすぐに金縛りが解けたんだ。
俺は叫ぶのも忘れて早く祖母の布団に逃げ込もうと反対側を向いた。
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