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青年の名は、ユリス。ユリス・ルナシェイド。人々より“魔王”という称号で呼ばれ、畏怖尊敬の対象とされる人物だ。
淡い螢火色をした髪を無造作に伸ばし、無機質な紫の瞳を持っている。そして儚くも美しい、そう言える顔立ちをしていた。
背には人外の異形、その全てが漆黒にて染め上げられた、一対の翼を携えている。
ユリスは若く、正確に読み取ることは出来ないが、まだ二十歳を過ぎた頃だろう。
ただ、万人が彼を普通とは見れないだろう。彼の内に秘められた強大な力は、晒け出す必要も無い程に、その存在を知らしめているからだ。
ユリスは扉を見据えたままで、微動だにしていない。だが、その表情は先程とは違い、ハッキリとした怒りと決意に満ちていた。
――不意の爆音。そして、共に揺れる地面。
突如として、扉の外から爆発音が響いた。爆音は次第に大きく、そして多くなりながら、此方へと近付いてくる。
ユリスは右手を持ち上げると、指を合わせて、弾いた。小さく、そして乾いた音が、玉座の間にて響いた。
無骨な扉は、その音を合図としたかのように、古めかしい音を立てて、ゆっくりと、開いていく。
完全に扉が開き切ると、その奥から二人の青年がゆっくりと中に入ってきた。彼らこそが、侵入者なのだろう。
内一人は男性、一人は女性だ。彼らもユリスと同様に若く、年の頃は恐らく近い。
彼らが玉座の間へと踏み入れた途端、ユリスの様子が一変した。先程まで抑えていた怒りの気を、一気に解放したのだ。
玉座の間全体に見えない重圧が掛り、侵入者の二人は思わず顔をしかめた。しかし、彼らはそれに負けずに毅然として立ち続ける。
彼らを見据えながら、ユリスは拳を握り締める。彼らもユリスを見据えながら、だが怒りは持っていなかった。
侵入者の一人、男性の方が目を見開きながら薄ら笑いを浮かべ、その口を開く。
「よう、久しぶりだな、ユリス。今日こそ決着を着けようぜぇ!」
男は昂ぶる気を抑えるように、力強い瞳でユリスを睨み付けた。
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