【序章:“魔王”】

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「無駄な事を……。 ウォール」  迫り来る光線を見据えながら、ユリスは黒剣を足下に突き刺す。すると、ユリスを中心に黒色の円陣が浮かび上がり、そこから薄い膜が現れ、ユリスを包み込んだ。  レガの放った光線は、ユリスを包むドーム状に展開した膜に命中すると、跡形もなく消滅した。  攻撃が打ち消されることを予想していたのか、レガは瞬時に次の詠唱を開始する。 「光よ、彼の者を滅せ! フォトン!」 「水よ、彼の者を捕えよ。 アクアケージ!」  レガの詠唱に続いて、クロエも詠唱を始める。そして同時に矢をつがえ、弦を引き絞った。  レガの掌に光が収束していき、球体を成していく。出来上がった光球は、レガが手を前に押し出すことによって、勢い良く打ち出される。そして一直線にユリスへと向かっていく。  クロエが引き絞っていた矢を放つと、それはユリスの足下に命中し、そこから水柱が現れユリスの自由を奪った。  クロエの魔法で身動き出来ず、レガの魔法が目の前に迫る。絶体絶命の状況の中、ユリスはそっと呟きを零す。 「リフレクター……」  ――そして響く、轟音。  自由を奪われたユリスは、回避行動を取ることが出来ず、光球は見事に直撃した。 「手応え有り……! だが、まだまだァッ!」  手応え確認したレガは、純白に染まる長剣を握り締め、ユリスの立つ場所に踏み込んでいく。  だが、光球によって発生した、濃い水蒸気に視界が阻まれ、思うようにユリスの姿を捉えられず、攻撃は当てずっぽうに近かった。  縦に振り落とすレガの剣撃は、漆黒の刃に攻撃を阻まれ、レガは無傷のままそれを握るユリスと、一瞬だけ視線を交える。 「効果無し、ってか」  確かな手応えを感じていた上、追撃まで加えたレガは、ユリスが無傷という結果に対し、吐き捨てるように舌打った。  レガの様子を見ながら、何故か微笑みを浮かべるユリス。レガはその表情に隠れた得体の知れない恐怖に、背筋を凍らせる。 「レガ、他所見をする暇があると思っているのか? 君の光球は、まだ消えてはいないぞ?」 「……何だと!?」  漆黒と純白の剣が拮抗する中、ユリスの言葉にレガは驚愕の声を上げた。 .
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