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その晩、薪割りやら水汲みやら草むしりやらでへとへとになった俺とレイジは、レイジの母さんが腕によりをかけて作った夕飯をたらふく食べた。
「うぅぅ…、もう食えねぇ、なんも言えねぇ。」
レイジは椅子の背もたれに存分に乗り掛かって食後の余韻に浸っている。
そういう俺も料理の美味しさについ食べすぎてしまった。
「ごちそうさまでした。凄く美味しかったです。」
「あいよ!あれだけあったのを全部食べるなんて、作ったかいがあるってもんさ。」
そういいながらレイジの母さんは食器を片付けている。
夕食の時から気になっていたのだが、レイジの母さんは俺の事について聞いてこない。聞かれた事と言えば名前ぐらいだった。
「なぁレイジ、お前の母さんて俺の事聞かねぇよな。」
「ん?あぁ…母ちゃんあー見えて結構人の事見てるからな、聞いたらまずそうな事とか何となくわかるんだろ?」
「ふーん…」
今いち釈然としないが、そんなものなのか、と納得した。
「それよりカズマ…、今日の夜出るからな…覚悟しとけよ…」
急にレイジがひそひそと声を落とした。
「は?出るって…」
「何言ってんだよ、今日出発するんだよ…。わかったな?合図は俺がするから、それまで普通にしててくれ…」
「お、おおう…」
出発と言うのは、きっとザイオンに向けてという事だろう。それにしたって飛行機の手配とかは必要ないのだろうか。
しかし今の頼みの綱はレイジだ、チャンスは片っ端から捕まえなくてはいけない。
…なんとかなるだろ
そんな風に考えながら、俺とレイジは刻々と過ぎてゆく時を過ごしていった…
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