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世界最大級の学園都市、麻帆良学園。
今日も数えきれない数の生徒が通学路を走る。
そんな学園都市の遥か上空で浮遊している青年が一人。全身を黒で統一した装いの青年だ。
一片の幼さも感じさせない整った顔立ちや、後頭部の高い位置で結った腰すら越えそうな長い黒髪に、眼差しだけで人を殺せそうな鋭い光を宿す瞳、加えて何か異様な雰囲気を纏っている等、人の目を惹く要素の塊のような青年だ。
人気の多い場所、更に派手な服装だと尚目立つ事だろう。
「ここが麻帆良学園か…」
青年は学園の中央にある大樹へ向かって進み始めた。だが、学園にある程度近づくと何かにぶつかった。
透明な壁、それは侵入者を防ぐために麻帆良学園学園長・近衛近右衛門が張った結界だ。
「結界か…こんな物…」
青年の右手から蒼い雷が発せられる。その雷は彼が力を込める程に、その激しさを増していく。
バックステップで結界から少し離れると一気に踏み込み、雷を纏う掌打を結界に叩き込んだ。
「雷鳴掌!」
結界の拒絶の力は強く、雷を押し返す。だが青年はそれをも上回る力で、結界に穴を空けた。
その穴から学園内へ侵入する。
学園の中心辺りに位置する巨大な樹木を一望できる広場に降り立ち、見上げる青年。
「あれが神木・蟠桃か。…話には聞いていたが…」
神木・蟠桃。生徒達からは世界樹と呼ばれている巨木だ。
この時間は人気が無く、見晴らしも良い世界樹広場に降りて、世界樹を見上げる。しばらく眺めていると、背後に確かな殺気を感じた。
「貴様何者だ?」
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