着任編 変わった名前の副担任

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 喉に触れる冷たい刃。  声質と、風に混じる特有の匂いからして、背後に立つのは女性。それも少女だ。 「何者かってのは名乗ればいいのか?」  その問いに少女は答えない。青年は溜め息混じりに。 「俺は乙鬼。神夜乙鬼だ」 「カミヤ…?」  少女に一瞬の隙が生まれた。乙鬼はそれを見逃さない。  長い刀を拳で弾き、少女に後ろ蹴りを放つ。少女はそれを腕で受け、飛び退くのと同時に独鈷を複数投げ放つ。  独鈷は乙鬼を囲むように地面に刺さった。 「稲交尾籠!!」  雷が柱となって乙鬼を拘束する。だが、乙鬼が全身に纏った紅いオーラに打ち消され、圧力により独鈷は弾き飛ぶ。 「何!?」  驚愕の声を上げる少女に、小さな閃光から取り出した黒い拳銃を向ける。  少女が後ろに大きく飛び退くのと引き金が引かれるのは、ほぼ同時。中空を穿つ弾丸は煌めく刃に阻まれ、四散する。 「気の弾丸か!!」  着地して、すぐさま構え直す少女の額から汗が伝い落ちる。睨み合いは続く。  鋭い目付きに色白で黒髪を左側に纏めたサイドポニーの少女。制服は中等部の物だ。 「学園の生徒か……」
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