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少女が力強く握る野太刀の柄には[夕凪]と彫られており、長い刀身は切っ先までブレる事は無い。
乙鬼が纏っていた紅い光が消える。それが合図となって銃声が轟いた。
素早く身を翻して弾丸を避け、少女は次の手、攻撃へ繋げる。
「斬空掌・散!」
少女の掌から放たれた気の弾丸は散り、弾丸を叩き落とした。
「斬空掌…それも派生型の“散”か。なら…」
空を斬る気弾の弾幕から逃れるように後方宙返りで大きく後ろに跳ぶ。
着地までのコンマ数秒間に銃のマガジンを別のマガジンと交換する。
「こっちも散弾だ」
グリップの[hand]の綴りが[shot]に変わった。両足が地を掴んだ瞬間、轟音と共に斬空掌が跡形なく炸裂した。
「何ッ!?」
「この距離なら俺が有利だが…さぁ、どうする?」
「刹那!」
「!?」
少女を刹那と呼ぶ、褐色の肌に黒髪ストレートロングの少女が走ってくる。
「チッ…新手か…」
乙鬼の左手が光り、その中から白い拳銃が現れた。黒い銃を刹那と呼ばれる少女に、白い銃をもう一人の少女に向け引き金を引いた。
黒い銃から放たれた弾丸はアスファルトをえぐり、石礫となって刹那を襲う。
白い銃から放たれた弾丸は、空中で強烈な光を放ち、視界を遮った。
「クッ…目眩ましか!? 刹那、奴は!?」
二人の視線の先には乙鬼はいない。ふと気が付くと、周辺に人の気配は無くなっていた。
「やられた…」
二人の間には妙な敗北感が漂っていた。
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