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コンコン。無機質で矮小な衝突音が二度鳴る。
書面に大きく重要と記された書類に、これまた大きめの判子を捺す老人は右の眉をピクリと動かすだけして、
「誰かの?」
「俺だ。入るぞ」
吐き捨てるようなセリフをくらい、今度は左の眉をピクリと動かして老人は判子を捺す手を止めた。
現れたのは、乙鬼だ。
「会うのは初めてだな近衛近右衛門。いや、今は“学園長先生”と呼んだ方がいいか?」
「後者が望ましいの」
フォフォフォと特徴的な笑いを発する近右衛門。
乙鬼は室内のソファに腰を落とし、足を組む。
「それで、本題だが…」
「おぉ、そうじゃな。準備はできておるぞ」
「わかった。詳しい資料をくれ」
乙鬼はソファに腰掛けた。
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