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ウィルはその場に立ち尽くしていた。
心が焦げつきそうな程の憎悪が湧いてくる。
気を抜けば、振り返ってリオーヌに袋を叩きつけてしまいそうだった。
いや、それもいいかもしれない、とウィルは考える。
いっそのこと、後ろから殴り倒して、ボコボコにしてしまえば。
何もかもを粉々に壊してしまえば、全てすっきりするかもしれない。
親子関係だって、二度と触れられなくなる程粉々に――
「いや、駄目だ」
ウィルは声に出して呟いた。
そうでもしないと、憎しみに飲まれてしまいそうだったのだ。
ここで暴れまわってみたって、結局は自分が惨めになるだけ。
何もいいことなどないのだ。
そうやって未来のことを考えることで、ウィルは自分のささくれ立った心を静めていった。
一方で、未来を省みない程馬鹿になれたらいいのに、とも思っていたが。
ウィルは何も言わずに家を飛び出していく。
母であるリオーヌと触れ合う度に、ウィルの心はいつもグチャグチャにかき乱されていた。
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