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気持ちの整理もつかないまま、ウィルがやって来たのは町の外れだった。
小高い丘のふもとにあるボロっちい家が、ウィルの目的地である。
「おーい、ユーゴ」
庭に入り、ウィルは玄関の扉をノックする。
すぐにユーゴと、数人のちびっ子達が家の中から出て来た。
「あ、ウィル」
「ほら、これ。余った野菜とかだよ」
ユーゴが袋を受け取ると、後ろのちびっ子達はキャッキャとはしゃぎだした。
「ありがとうウィル兄ちゃん!」
「今夜はごちそうだ!」
無邪気にはしゃぐちびっ子達を見て、ウィルは少し胸が痛んだ。
こんなクズゴミみたいな野菜と果物がごちそうなんて、ウィルには考えられない話なのだ。
「いつも悪いね、ウィル。あがってく? 今はシスターいないけど……」
「いや、いいよ」
せっかくの誘いだったが、ウィルは断っておいた。
今は遊ぶ気分になれなかったのだ。
ここは、ユーゴの住んでいる孤児院である。
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