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ユーゴには親はいなかった。
物心つく頃から、この孤児院で暮らしていたのだ。
「えー、ウィル兄ちゃん遊ぼうよー」
「つまんなーい」
ダダをこねるちびっ子達。
ウィルは曖昧な笑みを浮かべることしか出来なかった。
「そっか、じゃ僕は仕事あるから」
ユーゴは袋を提げて、孤児院の中に戻っていった。
仕事というのは、孤児院の院長であるシスターの内職を手伝っておくことである。
夢のために魔導の勉強をしたかったユーゴだったが、そのためには莫大な金が必要だった。
そもそも魔導とは、金に余裕のある貴族の子供が習うもの、というのが一般的な見方なのだ。
ユーゴは朝は無理を言ってやらせてもらっている牛乳配達のバイト、昼は魔導院の講義、夜は内職の手伝い兼チビ達の面倒を見ると、ハードな日々を送っていた。
せっかくの長期休暇中でも、ただ夜の予定が昼に移っただけである。
自習もしなければならないため、ひょっとしたら逆に忙しくなったかもしれないくらいだった。
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