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もやもやした気持ちを抱えたまま、ウィルは町中を当てもなく歩いていた。
家には帰りたくない、かといってアリシアと約束をしていたわけではない。
師匠のところに暇つぶしにでも行くかと、ウィルはぼんやりと行き先を決めた。
その時である。
「あのー、あのー?」
遠慮がちに、可愛らしい声がかけられた。
だがウィルは心ここにあらずで、その声に気付きそうにない。
「あのー、あのー、そこの方! ……あのー!!」
耳元で怒鳴られ、ウィルは腰を抜かした。
それから、ぎこちなく首を動かして声の主を見る。
自分と同い年くらいの、ピンクのツインテールが印象的な少女だった。
「道案内をしてくださらないかしら?」
少女はくりくりとした無垢な目をウィルに向け、おっとりとした調子で聞いてきた。
「み、道案内? なんで俺が」
いきなり怒鳴られたこともあり、ウィルは不機嫌そうにそっぽを向いた。
少女はうーんと唸って、困ったように立ち尽くしている。
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