1.天才クズウィザード現る!

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どうしてこんなことになっちまったんだ! 少年ウィルは、真っ暗な通りを駆けながら心の中で吐き捨てた。 だが、その声は誰にも届くことはない。 通りには人っ子一人おらず、ただウィルと、背後から迫り来る追跡者の足音しかなかったのだから。 (どうして――) 息も絶え絶えになりながら、ウィルはか細い声を漏らす。 すると、その時足首に鋭い痛みを感じてウィルは転倒してしまった。 痛みの元に目をやれば、牙の生えた黒い拳大程の大きさの球体がかじりついている。 身の毛のよだつような薄気味悪さを持った、小さな悪魔のようだった。 (――こんなことにっ!) 足首からは、生暖かく不快な鉄の香りの血が流れ出る。 追跡者の足音はすぐ近くまで来ていて、ウィルは自分の死期が近いことを悟った。 (どうし、て……) まるで走馬灯のように、ウィルの頭の中に今朝からの出来事が駆け巡る。 それは、長い長い一日の記憶であった。
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