17.霧の町の幻

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トルケッタの広場には井戸があり、そこは町民が自由に使えるようになっている。 ウィルとラジは早速広場まで来たわけだが、 「あーあ、あれが井戸端会議ってやつか」 井戸の周囲でおばさん集団が大声で世間話をしているのを見て、ガクリと肩を落とすウィル。 「まあまあ、これはある意味平和ってことですよ」 ラジはそう言うと、そろそろと井戸に近付いていった。 「あの、ちょっといいですか?」 ラジが割り込むと、おばさん集団はぱたりと話すのを止めた。 そして、じとっとした目でラジを睨みつける。 これだから軍人はとか、まったくねぇだとか、数々の愚痴めいた言葉を残しておばさん集団は去っていった。 「え? え? ゴ、ゴメンナ――」 「気にすんなよ、ラジ」 突き放された気がして半泣きでパニックに陥るラジに、ウィルは優しく声をかけてやる。
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