最終章 永遠の星屑

28/30
2392人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
「帰ったらさなえに言う。もう、気持ちに嘘はつきたくない。さなえは全部知ってるんだ。俺と杏子のこと」 俺は言うまいと決めていたことを話すと、杏子は少し動揺し黙っている。 「それに、今まで、決してうまくいっていたわけじゃない。俺の中で、まだ杏子を忘れていなかったし。だから…さなえは俺を憎むかもしれない。許さないだろう。だけど俺は、どんなものにも杏子には代えられない」 「…准兄…。いいの?私で、いいの?私がそばにいても、いいの?それなら…私、東京へは戻らない。准兄ともう離れたくない!」 杏子は涙で少し声を震わせならそう言って俺を真っ直ぐ見つめると、俺の胸も熱いものが込み上げてきて杏子の頬に触れた。 「俺もだよ。二度とあんな思いはしたくない。離れたくない」 「うん。これからはずっと、ずっとそばにいるわ。この想いを、もう誰にも譲らない。誰になんと言われても貫くわ」 杏子はそう言うと、涙ぐみながらにっこりと微笑んだ。もう、触れることは許されないと思っていた柔らかな唇をなぞる。幾度、夢を見てきただろう。この唇に触れられる日がまた来るなんて。やっぱり、俺は間違ってたんだ。あの時、あんな別れ方をするべきじゃなかった。なのに、俺は一人で突っ走って、現実から逃げてしまった。もう、逃げない。いつもまっすぐで、この恋を曲げないキョウが好きだ。その強さに、憧れる。 「愛してるよ」 俺はそう囁いて唇を近づけていくと、杏子はゆっくりと目を閉じた。 変わらない、柔らかい唇が重なった。滑らかな頬。まっすぐな眼差し。唇は溶けそうなほど柔らかくて甘くて、一度重なるとなかなか離れない。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!