1人が本棚に入れています
本棚に追加
雨宿り
「もぉ…ホント、有り得ない。今日、雨だなんて一言も言ってなかったのに…」
学校からの帰り道、突然の夕立で、私は近くの商店の軒下に逃げ込んだ。
世間一般的に良く言われてる『雨女』…私は、其に該当するらしい。
勿論認めてはいないけどね?だから尚更…傘なんて持ち歩いたら『どうぞ降ってください』そう、言ってる気がして…それが悔しくて、出掛けに雨が降ってなかったら傘は持ち歩かないって決めてる…それが理由で、今こうしているんだけどね…。
「…ンだよ、凄ぇ雨…」
空を見上げてる私を現実に引き戻した声。そう、これがアイツとの最初の出会いだった。
同じ位の歳だろうか…私服を着てるから、高校生ではないかもしれないけど…。
そんなことを考えながら相手を眺めてると、視線はぶつかった。
「よっ、今帰りなんだ?…工藤さん、だよな?」
笑顔を向ける相手に、思わず逸らす私。
どっかで会ってる?
知り合い?
……っていうか、誰?
何で私を知ってるのよ?
平静を装いながら、ゆっくり相手に視線を向けるも、そこは見透されてるらしい。
「…お前誰?…って表情だな。そっか、俺は眼中になかったってワケね。まぁ、いいや…また、近いうちに会えンだろうからさ。じゃあなっ」
一方的に話すと、にこっと笑顔を向け、左手を挙げ軽く振りながら、雨の中に消えて行った。
無意識のうちに応えて振り返してた、自分の右手を慌てて降ろす。
「見ず知らずの男相手に…何やってんのよ、私は…」
たった、数分のこの出逢いが…私を大きく変えるなんて思ってもいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!