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赤い空と白い翼
立ち並ぶ、高層ビル。
騒がしい雑音。
分刻み、秒刻みの日程通りに動く人間達。
平和で恵まれた先進国。
ある日、何の前触れもなく、空から爆弾が降ってきた。
既に光の無い瞳で、俺は空を仰いだ。
ビルの間からわずかに見えていた、いつもなら灰色なはずの空を。
「赤い空が、落ちてくる・・・。」
俺は、その時に死ぬはずだった。
しかしその一分前、俺の運命は狂った。
目の前に、何か白いものが降り立ったのだ。
それは、真っ白な翼を背負った、天使だった。
それは俺より少し幼くて、この都会でも見かけたことがないほど可愛らしい女の子だった。
が、その子もまた、俺と同じように光の無い灰色の瞳をしていた。
彼女は言った。
「この翼をあげるから、空に逃げたらいい。」
俺は少し戸惑った。
だが俺は、他の奴らと同じ、あまり良い人間ではなかった。
それに、天使は人を助ける生き物だと知っていた。
だから、俺はすぐにその翼をもらって空へと飛び上がったのだ。
灰色の空。
ほこりっぽい空気が俺の肺を満たしてゆく。
下を見下ろすと、背中から真っ赤な血を流した少女がこちらを見上げて笑っていた。
次の瞬間に、激しい爆音がし、少女の笑みは瓦礫と砂ぼこりにかき消された。
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