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元はと言えば沙桐の方が先約なのだ。それにその日はクリスマスイブ。一日中一緒にいたいのは、本当は沙桐だった。久しぶりに会えるからと、とても楽しそうにしていたのだ。
しかし、あんなに困っていた葵を放っておくわけにもいかないし、なにより半分寝呆けていたにしても既にOKしてしまったのだ。ここはやはり沙桐に別の日にしてもらうしかない…そう決意して陽朔は話を切り出した。
「沙桐…24日のことなんだけど…急に用事が出来ちまって…それで…」
[…行けなくなった、とか?]
「…悪い」
受話器の向こうから沙桐のため息が聞こえて陽朔は罪悪感に胸が痛んだ。
[…いいよ。急用じゃ仕方ないよね。またの機会にしよう。]
「沙桐…本当にごめん。25日じゃ駄目か?」
[25日は用事があるんじゃなかったっけ?]
「あ…。じっじゃあ」
[いいって、気にしなくて。また何時だって逢えるんだから]
「沙桐…」
[…ねぇ、理由だけでも聞いていい?]
「…葵の友達の店、手伝うって約束しちまったんだ」
[そっか。それじゃ断れないよね。陽朔は人に何か頼まれると弱いからね。]
「……」
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