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その日の下校時、男4女4の8人で徒党を組んで、私たちはその家へ向かった。足取りの重いチイちゃんと私が先頭だった。学校から向かうと坂の下手から上がる形になる。彼女は坂の上手から学校に向かって下りていく時に見たのだろう。坂が近づくにつれ、チイちゃんの足取りは重くなった。
「朝倉、早く歩けよ」
「大丈夫だって。俺らがいるじゃん」
「ちょっと男子うるさい」
坂のふもとでチイちゃんの足は完全に止まった。石垣に隠れて有刺鉄線の向こうに幽霊屋敷の屋根だけが見える。
「朝倉~」と不満の声があがる。
チイちゃんはただ耳を塞ぎ首を振るだけだ。
「じゃあいいよ。俺らだけで見てこようぜ。朝倉、ここにいろよ。どの辺か後でもう一回教えてもらうからな」
そう言って、怖いもの知らずの男子4人組と女子1人は坂をあがり、残ったのは私とチイちゃんと由美ちゃんだけとなった。
「大丈夫だよ」と私は言った。
「持ち主の人が帰ってきただけだって」
「カーテンかなんかと見間違えたんじゃない?」
チイちゃんは怯えた目で、家に向かう子達を見ている。
家の前まで行った子達が戻ってくる。
「どうだった?」期待を込めて私は聞いた。
「シャッター全部閉まってた。本当に見たのかよ」
「嘘」
チイちゃんと私と由美ちゃんも走って坂を上る。坂のてっぺんから少し下がったところ辺りで家の全体が良く見渡せた。
「本当だ。閉まってる」
そこには相変わらずゴミの散らばった庭の中で、以前と変わらずひっそりと暗い雰囲気を醸し出す家があるだけだった。人が居た気配もない。
「本当よ。本当に見たの。嘘じゃない。本当にいたの。あそこ。あの窓に」
チイちゃんの指した二階の窓はシャッターで閉じられている。
「やっぱり家の人が帰ってき……」
「本当よ。本当にいたの」
「うん」
そう言いながらも、見間違いなんじゃないかという気が強くなってきた。女の子が窓から見下ろしていたって? よっぽど気の強い女の子だね。私だったらこんな所入りたくもない。
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