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ギーズ公の廷臣ロバーツからマグナ火山が噴火したという話を聞いたのは、ちょうど私がギーズ公に召し抱えられてから三十年が過ぎた日のことでした。
暫くは口もきけない状態にあった私に決まり文句を口にして、ロバーツは急いで私の部屋を去って行きました。
若い頃から変わらない、物事を冷笑的に見る性格は、廷臣達には不快なもの以外の何物でもありませんから、私はいつも一人でした。
近頃の若者の礼儀の無さを嘆く同年代の老人の中にあって、私は若者達のその反骨精神と気概をいつも心地好く感じております。
今回、わざわざこのような書をしたためるに至った経緯については、自分の心の内もわかりません故に割愛させて頂きます。
ただ、マグナ火山の噴火が強く関わっていることは否定できません。
というのも、私の故郷はその溶岩にのまれ、全滅したとの報告をうけておりますし、初恋の少女も、彼女を巡って時に争い、時に涙した親友達もまた溶岩にのまれたことは抗いようのない事実だからです。
しばし、私の若き日の反骨精神と気概に溢れていた少年の頃に言葉を戻しましょう。
今は萎びた掌がまだつるつると光沢を放ち、目に見えるもの全てが輝いていた時代の話です。
その頃は、マルガリータもまだ美しく何も知らない、初な娘でした。
ザクセーナ公とアルベニア公との王位継承戦争を尻目に、水の都サラディニアが、繁栄を謳歌していた古い時代の物語です。
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