比蝣(ひゆう)

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比蝣(ひゆう)

ここはとある屋敷…… 「ちょっと……あんたなにしとん?」 私は声の方に振り向いた。そこには使用人らしきの女の人が立っていた 「……何か?」 「新入りなん?壁に向かって独り言いうてどないしたん?」 壁に?……何をいうてるんやろ? 「……なんもしてないですよ。ただ、おじいさんと話してただけですから」 私の目の前には確かに老人が座っている 「気味の悪い事言わんの、早ぅ仕事してや」 その人はぱたぱたぱた……とおかしな出て行き方をして去って行った…… 「嘘やないのに……」 「どうしたんじゃ、比蝣(ひゆう)?」 目の前にいる老人は私の様子が変なのに気付いて話しをかけてきた 「んたぶん、あん人知らんのやね」 「知らん?」 「うん……自分が幽霊やってこと」 だって……壁を擦り抜けて行きよったんやもん 「ほぅ……そうなんか?」 「うん。おじいちゃんには見えないの?」 「ああ……わしは目が不自由じゃからな」 ハハハって笑い事じゃないよ…… 「あの人は先週に死んだ新人さんやね」 「何故わかる?」 「確か来てすぐ病気になって死んだ人に似とったし……なにより、私を知らんかったからよ」 私を知らんという事はここに住んでいる人ならまずありえん事や…… 「そうやな、比蝣を知らんのはおかしな事じゃ。比蝣はこの家に必要な子じゃのに」 また笑いよる…… 「源九郎(げんくろう)様、お昼の用意が出来ましたよ」 また違う使用人の女の人がやってきた 「もう、探しましたよ。また比蝣さんと話をしていたんですか?」 「おお真知(まち)さんか?比蝣はここにおるぞ。ここじゃここじゃ」 老人は私を指差して言う。使用人の女の人は一瞬引き攣った顔をしたが、すぐに元の笑顔に戻った 「……はいはい。比蝣さんごめんなさいね、源九郎様はこれからお昼なの。少し借りるわね」 そう言うて老人と一緒に部屋を出て行った ……さぁ、次はおじいちゃんと何の遊びしようか? 「ねぇ……今日、比蝣さんがおったらしいんやろ?」 「また?!」 「良かったわ、後少しで叫ぼうとしてたもの」 「あの子の存在を否定したらどうなるか……」 「先週の人は幽霊信じんかったから死んだんやろ……」 だって比蝣さんは、源九郎様の大事な………………………………………………………………………………………………ずっと前に死んだ孫やもんね……
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