紅(れん)

2/3
前へ
/15ページ
次へ
次の日もその男は来た 「名は何と言う?」 「お客さんとして来てくれたら何でも教えますよ?」 「……また来るわ」 その次の日 「名は?」 「店の中入らんかぎり教えません」 「……うん、また来る」 聞いて答えられへんかったら帰ってていく…… それを毎日繰り返してもう一月が経った 「紅(れん)さん、何や良い事あったん?」 「なして?」 「なんや顔が最近明るぅなっとるよ」 明るい?私が?? 「……そうやろか?」 「あら、あのお侍さんやない?紅さんによう名前聞きよる」 「ああの、にこにこ顔の!」 「やめてや、ウチはそんな事で明るぅなったりせん」 あのお侍さんの話は今、この店で少し噂になっている……それは私に唯一落ちることのないお客さんやからや ウチに落ちん男がこの世におるなんて…… せやけどウチもウチ……そんな人に何故か今は逢える事が嬉しいと思い始めている。いつもあん人を探している自分がおる…… せやから、みんなから明るいって言われるのかもしれんなぁ
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加